第8章
沙良視点
実家からの経済的な支援が打ち切られたその日から、私の人生は本当の意味で、私自身のものになった。
昼は大学のコーヒーショップでウェイトレスとして立ち働き、夜はコンビニの蛍光灯の下でレジを打ち、週末は花の香りに包まれながら配達に駆け回った。
睡眠時間は毎日四、五時間。指先は硬いタコに覆われ、鏡に映る顔は疲労でやつれていた。
それでも、不思議なほど心は軽やかだった。これほど過酷な日々の中で、これほどまでに自由で、満たされていると感じたことは、かつて一度もなかったのだ。
「沙良、ずいぶん痩せたね」悠斗が心配そうに言った。「俺がもう一つバイトを増やそうか。そうすれば、君もそ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
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