第010章 彼女を救った人

水瀬遥人だった。

ダークグレーのカジュアルウェアを着こなしたその姿は卓然としており、端整な顔立ちと優雅な所作は、まるで神が丹精込めて彫り上げた芸術品のようだった。

ただそこに佇んでいるだけで、独特の風景を作り出している。

ふと、彼が視線をこちらに向けた。

神崎彩はその眼差しを受け止めた瞬間、昨夜の曖昧だった記憶が一気に鮮明に蘇った……。

そう、昨夜インペリアル・コートで彼女を救ってくれたのは、彼だったのだ。

この瞳を覚えている。清らかな泉のように澄んでいて、淡然としているのに、なぜか不思議な安心感を抱かせる瞳だ。

血を吐いて彼の服を汚してしまったのに、彼は怒るどころか病院まで送...

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