第159章 これは離婚届の受理証明であって結婚証明書ではない

神崎彩は、彼が全身から発する無言の悲しみに当てられたのか、まだ時間に余裕があることもあって、彼を急かそうとはしなかった。

ただ、彼女の心にはもう、期待など欠片も残っていなかった。

あの日、「インペリアル・コート」での酒宴で、彼が彼女一人を置き去りにして九条莉奈を連れ去った時、胸の奥で燻っていた最後の残り火は消え去ったのだ。

ここまで来れば、もう戻れない。

十年に及ぶ縁は尽きた。人生という列車から、結局は別々の駅で降り、それぞれの道を歩むことになる。

愛も憎しみも、誰が正しくて誰が間違っていたかも、すべて風に流せばいい。

彼女は胸の奥に残っていた最後の苦味を、そっと飲み込んだ。

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