第177章 悪辣な落とし穴

実のところ、天音雫が余計なことさえしなければ、神崎彩は彼女に対して悪意など抱いていなかった。

神崎彩は手のひらを差し出し、促すような仕草を見せた。「天音社長、どうぞお掛けください」

天音雫が腰を下ろすと、神崎彩は菅野雪子にコーヒーを二つ運ばせた。

天音雫は上辺だけの笑みを浮かべた。「『セレスト』の物件が売れたそうですね。すべて神崎さんのおかげですわ、おめでとうございます」

神崎彩もまた、礼儀正しく応じる。「ありがとうございます」

天音雫がわざわざ神崎彩を訪ねてきた理由が、単なる礼であるはずがない。神崎彩はそう確信していた。

だが、天音雫が口火を切らない限り、神崎彩から尋ねるつもり...

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