第196章 心に五年秘めた女

柚月徹は吐き捨てるように言った。

「あの古狸め、俺が嗅ぎ回ってることなんざお見通しってわけだ。警戒されてるよ。今の俺は所詮、名ばかりの後継者(あととり)に過ぎない。組の中はあの爺さんの息のかかった連中ばかりで、誰一人として本当のことを話そうとはしねぇ」

彼はそこで言葉を切り、少しだけ声を潜めた。

「だが、それでもいくつか突き止めたことはある。親父は商才に長けた男だった。鋭いビジネスセンスを持っていて、ヤクザ稼業なんて長続きしないと見抜いていたんだ。お袋が妹を身籠った年、親父は足を洗うつもりでいたらしい」

「まだ見ぬ娘のことを、親父は心から愛していたそうだ」

「だが、柚月匡志(まさし...

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