第201章 一時も嫁から離れられない

「特に用事というわけじゃないんですが、ちょっと悩み事があって、神崎さんに相談に乗っていただきたいんです。もしお昼にお時間があれば、ご馳走させてください」

上木俊夫は電話口でそう言った。

神崎彩はそこで初めて腕時計に目を落とした。もうすぐ昼休みになる時間だ。

彼女は迷わず、淡々とした口調で答えた。「私はもう西園寺グループとは無関係よ。仕事の引継ぎも退職前にすべて終わっているわ。会う必要はないと思う。下手に会って機密漏洩なんて疑われたら、お互い面倒でしょう?」

「仕事の話はしません。本当に、ただ食事をするだけですから」

上木俊夫は必死に食い下がった。その声は微かに震え、焦りが滲んでいる...

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