第240章 大人の世界

神崎彩は、手にした決算書の束をぎゅっと握りしめた。

残業を引き止められたのは、この話をするためだったのだと、ようやく合点がいった。

彼は、ついに目を覚ましたのだ。

それに、二股をかけるような不誠実な真似はしないということでもある。

私が彼を誤解していただけだ。

彼は取捨選択ができる人だ。それでいい。

たとえ、切り捨てられたのが私だったとしても……。

「いいえ。以前から分かっていましたから。私とあなたは住む世界が違う、あり得ないことだって」

彼女はあくまで他人行儀に、彼に向けて微笑んだ。「水瀬社長、考えすぎです。今の話は、何もなかったことにしましょう」

そう言って顔を伏せ、仕...

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