第279章 一人は死に、一人は狂う

取り乱す彼女を見て、橘薫《たちばなかおる》と神崎彩もそれ以上問い詰めることはできず、彼女が落ち着くのを待った。

浅木世志《あさぎよしゆき》が痛ましげに声をかけた。「温子《あつこ》、ゆっくりでいい。神崎さんも橘弁護士もいい人たちだ。進《すすむ》のためにずっと調査してくれていたんだ。水瀬社長と同じで、俺たちの味方なんだから。落ち着いて、な」

「分かってる、分かってるわ」

浅木温子は涙を拭った。

神崎彩は温かい水を一杯、彼女に手渡した。「おば様、水を飲んで。ゆっくりで大丈夫ですから」

「ありがとうございます、神崎さん」

震える手でカップを受け取り、一口飲むと、温かい容器を両手で...

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