第286章 一線を画しに来た

美味と美色に対する、命がけとも言えるほどの決死の抵抗だった。

ここで妥協するわけにはいかない。

水瀬遥人の瞳からふっと光が消えた。それ以上は無理強いせず、ただ静かに溜息を吐く。

「分かった。どうやらその掃除とやらは、随分と重要な任務らしい。おやすみ、神崎さん」

「おやすみなさい」

神崎彩は自宅のドアを開け、逃げるように中へ飛び込んだ。

掃除する場所など、実のところどこにもない。

週に二回、定期的に家事代行サービスを頼んでいる上、毎日こまめに片付けているのだから、部屋の中は塵一つなく整頓されている。

なのに、窓を閉め切っているせいだろうか、どうにも胸の奥が息苦しい。

換気のた...

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