第299章 妹を君に嫁がせない

神崎彩は思わず言葉を失った。

この男、さっきまであんなに突っかかってきたのに、今度はこんなに優しくなるなんて?

いくらなんでも情緒不安定すぎないか?

だが、そんなことを深く考えている暇はなかった。柚月匡志がすでに彼らの目の前まで歩み寄ってきていたからだ。

彼は五十代半ば。銀縁の眼鏡をかけ、体型もよく維持されており、全身から上に立つ者特有のオーラを放っている。

一見すると、理知的で上品な老紳士といったところか。

しかし、よく観察すれば、その瞳の奥に一瞬だけ閃く鋭さと、抜け目ない計算高さが見て取れる。

水瀬遥人の前に立つと、彼はその威圧的な気配を潜め、慈愛に満ちた長者のように挨拶を...

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