第305章 まだ名分がない

水瀬遥人の手には、洒落た紙袋が提げられていた。

神崎彩はすでに口を利く気力もないほど腹を空かせていたが、彼からその紙袋を差し出された瞬間、パッと目を輝かせた。その瞳は星のようにきらきらと光っている。

「モンブランですか?」

驚きと喜びに満ちた視線を水瀬遥人に向ける。

「これ、私に?」

水瀬遥人は答える。

「ああ。飯も食わせなかったからな、心の中で俺のこと百回は罵っただろう?」

神崎彩は小さな声で呟いた。

「そこまでは……」

水瀬遥人は呆れたように鼻を鳴らす。

「車に乗ってから食え」

「ありがとうございます、水瀬社長」

神崎彩はケーキを手に車へ乗り込んだ。

それに続い...

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