第348章 彼女は彼の全世界

その言葉に、神崎彩は完全に頭が真っ白になった。

「神崎さんはずいぶんと忙しいんだね。お見合いまで控えているとは」

傍らから、水瀬遥人のひときわ穏やかな声が響いた。

彼女が恐る恐る視線を向けると、そこには和やかな笑みを浮かべた、とびきり優しい水瀬遥人の眼差しがあった。

神様、どうか助けて。

彼が冷たい態度を取るのなら、そこまで怖くはない。

彼女が恐れているのは、この笑顔の裏に刃を隠したような、背筋が凍るほどの恐ろしさなのだ。

泣き出しそうになりながら、彼女はしどろもどろに答えた。

「わ、私は何も知らなくて」

水瀬遥人は笑みを絶やさないまま、しかしその笑顔には鋭い棘が混じってい...

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