第362章 彼女と家に帰りたい

神崎彩はもう一度周囲を見回した。近藤七海の姿も、高杉進介の姿もない。

そこにいるのは、水瀬遥人ただ一人だった。

仕事や何かの用事であれば、近藤七海が同行しないはずがない。

だが今、彼は一人だ。

自分に会いに来たのだと、神崎彩は確信した。

水瀬遥人は彼女の向かいに腰を下ろした。

このような屋台の安っぽいパイプ椅子は、彼の身を包む高級なオーダーメイドスーツとはどう見ても不釣り合いだったが、彼には嫌がる素振りなど微塵もない。

彼は神崎彩を見つめ、薄く微笑んだ。

「神崎さん、俺にもワンタンを一杯奢ってくれないか?」

神崎彩はハッと我に返り、女将にワンタンをもう一つ追加で注文した。

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