第368章 お前が俺の妻をなくしたら、俺は一生結婚しない

水瀬敬二は書斎にいた。

広住素子はルーフガーデンのテラス席に腰を下ろし、花を愛でながら涼んでいた。

水瀬遥人が帰ってきたのを目にすると、広住素子は顔に柔和な笑みを浮かべて歩み寄った。

「遥人、今日はどうして急に帰ってきたの?」

水瀬遥人は無表情のまま彼女を見つめた。

決して怒気を発しているわけではない。だが、一切の感情を排した、底なし沼のように静まり返ったその瞳は、底知れぬ恐ろしさを湛えていた。

実の母親である広住素子でさえ、思わず気圧されてしまうほどだ。彼女はおずおずと尋ねた。

「遥人、どうしてそんな目で見るの? 何か気に入らないことでもあった?」

水瀬遥人は沈黙したまま、...

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