第370章 彼女に報告しておかないと

水瀬遥人は深くため息をつき、長い沈黙の後に口を開いた。「身分は万能の解決策じゃない。家柄が釣り合っているかどうかの他に、母さんにはどうしても拭えない思いがあるんだ。神崎彩に結婚の過去があるっていう事実がな」

それに神崎彩の心にも、固く結ばれたしこりがある。結婚生活が残した深い傷跡だ。彼女は愛を信じず、再び傷つくことを何よりも恐れている。

だったら、どうして『身分』などという問題のために、わざわざ彼女を危険な目に遭わせる必要がある?

今の彼女に必要なのは、時間だ。

なら、俺が彼女に時間を与えればいい。

……

神崎彩が目を覚ました時、時計の針はすでに夜の八時を回っていた。

空腹で目...

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