第386章 合格な元恋人

天音雫は、もうすっかり平静を取り戻していた。

彼女は申し訳なさそうに神崎彩へ笑みを向ける。

「神崎さん。私と遥人が昔……愛し合ってたからって、私のこと敵視したりしませんよね?」

――愛し合ってた?

神崎彩は、どこか愉しげに口元を吊り上げた。

水瀬遥人は昨夜、はっきり言っていた。自分は天音雫に対して、これまで一度も“そういう気持ち”を抱いたことはない、と。

彩は遥人を信じている。そもそも遥人は、天音雫が「お兄様」の想い人だと知っているのだ。そんな相手に、妙な気を起こすはずがない。

それにしても……どれだけ自信過剰なら、「遥人は私に気がある」と思い込めるのだろう。しかもそれを“相愛...

ログインして続きを読む