第429章 食べさせるならもう少し優しくできないのか

この二日ほど、近藤七海が水瀬遥人の部屋を片づけるたび、決まって空の酒瓶が出てきた。

水瀬遥人はもともと、酒も煙草も好まない男だ。何ごとにも溺れず、どこか俗世から一歩引いているような人間で、自制心の強さはむしろ恐ろしいほどだった。

そんな仙人じみた男でさえ、恋に傷つけば地上へ落ちてくるらしい。

近藤七海は最初、失恋したんだし、少しくらい酒に頼ったっていいだろうと思っていた。

けれど今の神崎彩の反応を見ると――本当にただの遊びだったのか。

近藤七海には、さっぱりわからなかった。

それぞれ胸に別の思いを抱えたまま、二人は階下へ向かう。

一方の高杉進介はというと、相変わらず能天気そのも...

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