第049章 彼女を娶ることはできない

彼はスマートフォンを江藤司に放り投げた。「分かった。お前は戻れ」

彼は階下へ降り、車に乗り込むと、神崎彩に電話をかけようとした。

水瀬遥人が彼女のためにあんな真似をしたのだと考えると、胸のざわつきが抑えきれなかったのだ。

だが、発信ボタンを押そうとした指が止まる。

あの動画が脳裏をよぎったからだ。

この電話は、かけられない。

彼は苛立ち紛れにスマホを助手席へ放り出すと、エンジンをかけ、車を西園寺家の本邸へと走らせた。

その頃、本邸のリビングでは、西園寺百合子が茶を啜っていた。

九条莉奈もそこにいる。

彼女は高級感あふれる包装のスキンケアセットを西園寺百合子の前へ押しやり、い...

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