第521章 彼女の心の中では、過去になったことは一度もない

神崎彩は水瀬遥人を見やり、笑っているのか笑っていないのか分からない表情で言った。

「水瀬社長、息子をこんなに大きく育てる度胸はあるのに、認める度胸はないの?」

水瀬遥人は小さく息を吐いた。

もちろん、わざと挑発しているのは分かっている。

それでも、言い訳はしなかった。

視線を少年へ向けると、ひやりとした目で告げる。

「水瀬将彦。今年のお小遣い、いらないってことだな?」

小さな顔が一瞬で媚びたものに変わった。将彦は水瀬遥人の前まで寄って、指先でそっと彼の手を引く。

「ハル兄さん、怒らないでよ。ね、怒らないで」

水瀬遥人はその手を振りほどき、ソファに腰を下ろした。

二人のやり...

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