第546章 彼の唇を噛み破る

神崎彩は彼にキスされて頭がくらくらし、胸の奥はむしろむしゃくしゃした。――このクソ男、いったい何様のつもり?

彼女も負けじと獰猛にキスを返し、そのまま唇に噛みついた。容赦なんて一切しない。

鉄のような血の匂いが、二人の唇と歯のあいだにじわりと広がった。

神崎彩は力いっぱい彼を突き放す。

水瀬遥人はそれ以上無理強いはせず、ただ彼女を見て言った。

「……これで、気は済んだ?」

神崎彩は彼の唇の傷を見て、ほんの少しだけ後ろめたくなる。けれど、すぐに胸を張って言い返した。

「自業自得でしょ」

「うん。俺の自業自得」

水瀬遥人は怒らない。むしろ、甘やかすようですらあった。

とくに彼...

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