第564章

帰り道、車内はエアコンの低い唸りだけが残るほど静かだった。

神崎彩はシートに身を沈め、目を閉じる。けれど胸の内は、ほどけない糸が絡まり合ってぐちゃぐちゃだ。

病院の入口で西園寺蓮に投げつけられた言葉――『お前、本当に守り切れるのか』。あれが、まだ耳の奥で回っている。

水瀬遥人は言った。『君が望むだけ、俺は待つ』

優しければ優しいほど、彩は思ってしまう。

もう、先延ばしにしちゃいけない。

引き延ばすほど、借りが増えるだけだ。

家に着くと、神崎彩は靴を脱いだ。すぐに二階へ上がらず、リビングのソファに腰を下ろす。

水瀬遥人は、彼女に言いたいことがあると察したのだろう。急かしもせず、...

ログインして続きを読む