第577章

淵本直紀が矢継ぎ早に仕掛けても、神崎彩はまるで散歩でもするみたいに、さらりと受け流していく。

直紀の表情は、みるみるうちに歪んだ。

本来なら――今日のこの宴は、神崎彩を思い通りに「握る」絶好の舞台のはずだった。

それがどうだ。噛みついても噛みついても、牙が立たない。

……このままじゃ駄目だ。

淵本直紀は大きく息を吸い込み、切り札を切ることにした。

彼女は席を立ち、グラスを手にしたまま会場の中央へ歩み出る。わざと声を張り上げた。

「皆さま。本日はこの場をお借りして、ひとつ――お知らせしたいことがございます」

ざわり、と視線が集まる。

淵本直紀は神崎彩を見据え、口角を冷たく吊り...

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