第578章

神崎彩の素性が公になったという報せは、雷鳴みたいに川市の社交界を真っ二つに割った。

たった一晩で、川市の名士たちはこの話題で持ちきりだ。

「聞いた? 水瀬遥人のそばにいる神崎彩って、柚月家のお嬢さんなんだって!」

「柚月家って……柚月悟の娘? あの子、もうとっくに――」

「さあね。昔、誰かに助け出されて、名前を変えて生き延びたって噂よ」

「それだけじゃない。水瀬家の命の恩人でもあるんだって。昔、温夫人が溺れたとき、助けたのが彼女だって!」

「うそ……そんなの、出来すぎでしょ……」

噂は瞬く間に燃え広がり、淵本直纪の政略結婚の目論見は、跡形もなく吹き飛んだ。

柚月家では、柚月お...

ログインして続きを読む