第076章 神崎マネージャー、私を利用してませんか

疑う余地はない。間違いなくさっきの混乱の最中に、キスしてしまったのだ。

唇にひんやりとしたものが触れ、それがごくりと動いた感触が、今も鮮明に残っている。

当時は何だか分からなかったが、今は分かる。あれは、彼の喉仏だったのだ。

なんてことだ、発狂しそう。

女っ気のないことで有名な水瀬社長を、出社初日に私が辱めてしまったというのか?

彼の目を見る勇気などあるはずもなく、視線はただその喉仏――冷ややかなほど白い肌に残る一抹の紅に釘付けになっていた。穴があったら入りたい、いや、いっそ死んでしまいたい。

頭上から、笑いを含んだ声が降ってきた。

「神崎さん、いつまで見つめているつもりだ?」...

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