第106章 改修工事は中止した

江口式の目尻から、ぽとりと涙がこぼれ落ちた。

それを見た後藤由紀も、ついに堪えきれず泣き出す。嗚咽まじりに叫んだ。

「じゃあ、治療をやめて……死ぬのを待つってこと?」

江口式は言葉を塞がれ、何も返せなかった。

それはずっと、彼女自身が抱え続けてきた迷いでもある。

江口式は、難題にぶつかったからといって投げ出す性格じゃない。けれど自分の病気のこととなると、どうすればいいのか本当にわからなかった。

これまでの算段は、ただ「引き延ばす」こと。できることなら、祖父母が寿命をまっとうするその日まで――。

だが今の体調は、そんな都合のいい結末が訪れない可能性を突きつけてくる。

病室は重た...

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