第115章 吐血する

ドアノブが回る音がした瞬間、江口馨はどう向き合えばいいのかわからなくなった。考える暇もない。反射的に廊下の角へ身を隠す。

寝室から出てきた江口信年は、怒気を纏ったまま階段を下りていった。

玄関の扉はまだ開いている。隙間越しに見えたのは、床に座り込んで泣き崩れる吉田詩乃の姿だった。頬にはくっきりと平手打ちの跡。そこに重なるように青あざがいくつも浮き、髪は乱れ、肩が小刻みに震えている。

江口馨は胸が締めつけられ、駆け寄って吉田詩乃を抱き起こした。

吉田詩乃は涙で視界が滲み、馨の様子がおかしいことには気づかない。スマホを取り出し、震える指で動画を開いて見せてくる。

画面の中で、江口信年が...

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