第141章 彼は保坂臣に騙された!

「ええ」

江口式はやわらかく笑って頷き、夏川媛の腕にそっと手を添えたまま、病院の正面玄関まで見送った。

夏川媛が車に乗り込み、テールランプが遠ざかっていくのを見届けてから、江口式は踵を返す。

ロビーに戻った瞬間、ばたばたと切迫した足音が近づいてきた。反射的に振り向くと、中年の男が子どもを抱えたまま、血相を変えて駆け込んでくる。

江口式は慌てて身を避け、咄嗟に両手で腹をかばった。だが男は勢いを止められず、肩にどん、とぶつかってくる。

「――っ」

数歩よろめき、江口式はそのまま床へ崩れた。

腰から落ちるのだけは避けたくて、わざと掌をついて体を支える。尻もちにはならなかったものの、手...

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