第21章 浮気相手も気まずくないのに、彼女は何を怖がるのか

古川承一は江口式をさっと一瞥すると、松本寧音へ営業スマイルを向けた。

「最近、いつ時間あるんだっけ?」

指先でテーブルを軽く叩きながらグラスに口をつけ、わざとらしく困った顔を作る。

「……ないな。たぶん、ずっとない」

ひらりと手を振る。

「じゃ、こっちの都合がついたら連絡するよ」

この席にいるのは、皆、酸いも甘いも噛み分けた連中だ。その言い回しだけで、古川承一が丁寧に断っているのがわかった。

林田景司の顔すら立てない。さすがは核心技術を握る古川社長の息子、まるで怯まない。

松本寧音はさすがにわずかに居心地悪そうだったが、口元の上品な笑みだけは崩さず、落ち込んだ様子も見せなかっ...

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