第30章 悪意

交通事故のせいで、江口式は会社の会議に間に合わなかった。となれば、同僚には最低限の説明を入れなければならない。

その話を聞いた後藤由紀は、すぐさま病院へ駆けつけてきた。

来る前に電話もかかってきて、まずは式の具合を案じ――無事だと知った途端、今度は叱り飛ばされた。

そして、病室のドアが開いてから三分。

後藤由紀の小言は、いまだ終わらない。

「……事故ったのに、なんで真っ先に連絡してこないのよ。私のこと、他人だと思ってるわけ?」

布団を頭までかぶり、江口式は降参の声を出す。

「わかった、わかったってば……次に何かあったら、いちばん最初に由紀に連絡する。これでいい? 後藤お嬢様」

...

ログインして続きを読む