第36章 最近、ずいぶん気が荒いな

江口式は、松本寧音と服が被ったところで気にする性格ではない。だが林田秋実のその言い方を聞いた瞬間、どれだけ温厚に振る舞おうとしても、表情はひとつ冷えてしまった。

玄関に入ってからずっと不機嫌そうな顔をしている林田景司を、江口式は一瞥する。

きっと林田景司も林田秋実と同じことを思っている。ただ彼は偽善的で、口に出せないだけだ。

一方、松本寧音は怒った様子すらない。むしろ江口式を見る目の奥に、薄い笑みが含まれていた。

何がおかしいのかは、松本寧音だってわかっているし、江口式にも察しがつく。

「滑稽ね」と言いたいのだろう。ほかに理由はない。

祖母は林田秋実に目配せして『それ以上はや...

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