第45章 江口式が焦っていないなら、自分が焦る理由もない

松本寧音は林田景司の後ろにつき、ひとりの婦人の腕を取っていた。

二人は眉や目元がよく似ている。松本寧音の母親だろう。

林田景司にとって、いずれ義母になる相手。

ひやりとした視線を感じ、江口式は反射的に目を逸らした。だが、その刹那――林田景司と視線がぶつかる。

ほんの一瞬。

林田景司は、まるで彼女など見えていないかのように、松本寧音母娘を連れて社用車へ乗り込んだ。

運転席にいたのは、林田景司の秘書。

――時間がなかったわけじゃない。

ただ、松本寧音の母親の世話で忙しかっただけ。

江口式は遠ざかっていく車を見送り、二分ほどその場に立ち尽くしたあと、ゆっくりエレベーターへ向かった...

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