第53章 お前に会いに来たんじゃない

松本寧音と進藤林也が、林田景司へ視線を向けた。

林田景司は眉間を一瞬だけきゅっと寄せ、すぐにいつもの淡々とした表情へ戻す。

「また今度だ」

箸を置き、長身の身体をすっと立ち上げた。

「トイレ行ってくる」

彼が出ていくと、林田秋実はどこか言いたげに松本寧音を見つめ、口を開きかけては閉じた。

本当なら江口式のことを思い切り愚痴りたかった。だが少し前、祖母にきつく言われたばかりだ。家の中がどうであれ、外の人間の前で江口式を槍玉に挙げるな、と。

どれほど松本寧音が好きでも、今の彼女は林田家の人間ではない。

どれほど江口式が嫌いでも、今の江口式は林田景司の妻だ。

夫婦は一体。外で妻の...

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