第56章 断ってもいいですか?

林田景司は返事をせず、テーブルの上のスマホを手に取って電話をかけた。

「……目を覚ました。俺が連れて帰る。もう心配しなくていい」

江口式はベッドヘッドに背を預けたまま、ぼんやりしていた意識が少しずつ澄んでいくのを感じる。頭が回り始めると、反射的に向けていた敵意をそっと引っ込め、訝しげに彼を見た。

――誰に電話してるの?

林田景司は通話を終えるとスマホを置き、立ち上がって彼女に近づいた。

「母さんが秋実から、おまえが酔ったって聞いた。様子を見てこいってさ」

夏川媛……。

なるほど。だからか。

江口式は、それ以上は訊かなかった。林田景司の立場なら、彼女の部屋のカードキーを手に入れ...

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