第76章 君を助けられない

タケイ・テク。

会議室の外にある待合スペースで、江口式はかれこれ三十分、音も立てずに座っていた。

会社に着くなり、「HYテクの方が先にいらしています」と告げられた。だから待つしかない。

ソファに腰を下ろした江口式の表情は終始おだやかで、焦りの色は一切ない。

やがて会議室の扉が開く。

江口式が視線を向けた。

高いヒールの音を響かせて出てきたのは松本寧音。隙のないメイク、口元には勝利を確信した笑み。

そのすぐ後ろから武井鳴が続く。

武井鳴は自分から松本寧音に手を差し出し、握手を交わした。瞳には、隠しようもない称賛が浮かんでいる。

――HYテクの提案に、相当満足したのだろう。

...

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