第8章 朝三暮四

当時、江口式は走行速度がチーターに匹敵するロボットAJ3の設計に関わっていた。AJ3は国家レベルの厳格な検査を通過し、軍事行動や災害救助への運用が可能だと認定された。

国家機密に関わる案件だったため、彼女は5年間の守秘義務契約に署名し、外部へ身元を明かすことを禁じられていた。

林田グループ傘下にはHYテクノロジーという会社がある。主にロボットを開発する企業だ。

彼女は当初、守秘期間の5年を林田景司との関係を育てる時間にあてるつもりだった。できれば子どもも授かって、守秘期間が明けたら家庭から一歩引き、HYに入って、もう一度自分の愛する仕事へ戻る――そう考えていた。

だから、恩師の古川教...

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