第80章 演技がいい

「ありがとうございます。お手数をおかけしました」

取り繕いではない。その礼だけは、江口式の本心だった。

林田景司は、特に反応を示さない。

ベッド上のオーバーテーブルを起こし、弁当箱を並べる。

「先に食べろ」

江口式は意外そうに彼を一瞥し、目の前の料理へ視線を落とした。

どれも薄味で、見た目も悪くない。

――けれど、食欲がまるで湧かない。

それでも今は、体を早く戻さなければならない。そう自分に言い聞かせ、箸を取って、少しずつ口へ運ぶ。

だが、数口で限界が来た。

胃の底から、ぐわっと波がせり上がり、喉元まで一気に込み上げる吐き気。

江口式は眉をしかめ、必死に堪えたが――無理...

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