第93章 見捨てられた道化

夏川媛は、気にしていなかった。

むしろ、もっと早くそうすべきだったとさえ思う。そうしておけば、江口式が色香で人をたぶらかしているなどと、くだらない噂を立てられずに済む。

たしかに今度は、「江口式は林田家の威光を借りている」と言われるかもしれない。けれど、それがどうした。

夏川媛は意に介さない。

彼女の狙いはただ一つ。海市の人間に、はっきり思い知らせることだ。

――江口式の背後には林田グループがいる。江口式をいじめるということは、林田グループそのものを侮るのと同じだ、と。

夏川媛を見送ったあと、江口式は驚くほど早く平静を取り戻し、すぐ仕事に没頭した。

その姿に、プロジェクトチーム...

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