第95章 捻挫

「いいぞ……!」

古川承一は心の中で武井鳴に喝采を送った。

林田景司は眉間をわずかに寄せ、視線を落として自分のグラスに酒を注ぎ足す。何かを思い出したように口元だけを薄く吊り上げて、

「たぶん、全部……彼女が選んだことだ」

その言い方は、古川承一の耳にはこう聞こえた。

江口式が悪い。自業自得だ、と。

江口式は仕事を捨ててまで林田景司のために三年を費やした。感謝しないどころか、そんな冷たい言葉で片づけるなんて――。

古川承一はグラスを置き、眼鏡を押し上げる。瞳の温度がすっと落ちた。

「えっ……江口さんの意思だったんですか?」

武井鳴は数秒だけ目を丸くし、すぐに腑に落ちたように頷...

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