第96章 彼女は林田家の人間

江口式が距離を取ろうとしているのを察したのか、武井鳴は反射的に合わせる。わざとらしく咳払いをひとつして、場を整えるように言った。

「林田社長、ご心配なく。医者を呼んであります」

林田景司はすでに立ち上がっていた。

その言葉を聞くと脇へ退き、表情を少し冷たくする。

医師が江口式のハイヒールと靴下を脱がせた。

それだけの動作なのに、江口式は痛みに眉を寄せ、歯を食いしばって耐える。

武井鳴は、今日の林田景司がどこか妙だと感じ、意識して様子をうかがった。

ちょうど江口式が痛みをこらえきれず顔を歪めた瞬間、林田景司もわずかに眉をひそめる。瞳の奥に、はっきりとした心配が浮かんでいた。

だ...

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