第97章 江口式、いい加減にしろ!

江口式はもう、これ以上ないほど彼にぴったり寄り添っていた。今の動きだって、ただ形だけ、ほんのわずかに身をずらしただけだ。

――なのに。

すぐあと、車窓が上がる音がした。

林田景司がいったん窓を開けたものの、車内が空調で冷えているのを思い出して閉めただけだろう。

要するに、彼女が寒くないか気にしたわけじゃない。

「情けねえな」

林田景司が、低く嘲る。

江口式はわずかに身をひねり、横目で睨んだ。

「……私のこと?」

「他に誰がいる?」

斜めに視線を寄越すその目の奥に、すっと光が流れた。

「そこまでか?」

――何度もしてきたくせに、今さら何を。

林田景司が言いたいのは、結...

ログインして続きを読む