第10章

かつて早希を包んでいた腕の温もりが、いまは氷みたいに冷たい。

彼が知らないはずがない。早希がこの誕生パーティーのために、どれほど準備してきたか。

招待客のリスト作り、進行の段取り、引き出物の選定、細部まで自分の手で整え、気づけば一か月以上が過ぎていた。

当日に着るドレスも、合わせるジュエリーも――。

胸の奥に失望と寒気が押し寄せ、香椎早希は視界がにじむのを感じた。

振り返って、問い詰めてやりたい。いったい、何様なの、と。

けれど喉まで出かかった言葉は、歯の裏で噛み砕いて飲み込んだ。

言ったところで、意味がない。

「いいよ。やっぱり旦那さん、私のこと気にかけてくれるんだね」

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