第114章

香椎早希が電話を取ったとき、手元では四半期の報告書をめくっていた。

竹内結菜の世話を任せている家政婦の声は、やけに低い。明らかな動揺が滲んでいた。

「若奥様……竹内さんが倒れました。救急を……」

早希の指が、紙の端で止まる。

「いつ」

「二十分ほど前です。お風呂から出た直後にそのまま倒れて、額をドア枠にぶつけて出血しました。怖くて……すぐ救急車を呼んで、いま搬送中です」

その報告を受けても、香椎早希は驚かなかった。

――まあ、そうなるだろう。

自分でも、どこかで分かっていた結果だ。

「分かった」

報告書を閉じ、表紙を人差し指でとん、と叩く。

「搬送先は?」

「市立病院...

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