第122章

翌日も、香椎早希はいつも通り松井誠美のもとへ薬を届けに行った。

ただ、旧宅に着くと――今日は珍しく執事が門口で待っていた。

「若奥様。奥様が今朝から具合が優れず……ずっと泣いておいででして。どなたが宥めても、お聞き入れになりません」

香椎早希は保温バッグを提げたまま足を止めない。

「分かった」

扉を開けると、部屋はカーテンが隙間なく閉められ、昼間だというのに薄暗かった。

松井誠美はベッドの背にもたれ、座ったまま俯いている。瞼は赤く腫れ、泣き腫らしたのが一目で分かった。

手にはくしゃくしゃのティッシュの塊。握り締めすぎて、指の関節が白い。

物音に気づいて顔を上げたが、香椎早希だ...

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