第129章

その言葉を聞いた瞬間、雲雀京介の笑みが、ほんの一拍だけ止まった。

「……いいよ。じゃあ俺が作る。何が食べたい?」

「京介が決めて。なんでもいい」

香椎早希はそう言ってふっと笑い、踵を返して去っていく。

オフィスに戻り、ドアを閉めた。

椅子に腰を下ろし、フォルダをデスクへ置く。

指先が無意識に鎖骨へ触れた。

――何もない。

あのサファイアのネックレスは、昨日、福田さんに回収された。

早希はパソコンを立ち上げ、メール処理を始める。

急ぎの案件など、別にない。ただ、今は席を立ちたくなかった。

彼の気遣いと段取りの良さは、いつだって欠けない。

欠けているのは――真心だけ。

...

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