第144章

桂川遠は社長室付きの秘書。各部署間の書類の回付と会議日程の調整を一手に引き受けている。

入社して六年。立ち位置は、いちばん目立たないのに、いちばん多くが見える場所――そこに引っかかったままだった。

香椎早希は報告書を机に置き、椅子の背にもたれて目を閉じる。

桂川遠という男のことは、前から気になっていた。

最初の違和感は、半年前。

彼女が下に指示した未公開のプロジェクト予算。まだ上申する前に、雲雀京介のほうで経理部の拠出プランが先回りして調整されていた。

そのときは、騒がなかった。

続けて二度。

一度目は、彼女が前もって段取りを組んだ取引先との面会に、雲雀嘉悠が自分より先にホテ...

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