第149章

遺言書のことから一夜明けても、雲雀家の旧邸を満たす空気は重いままだった。

雲雀京介は朝早く会社へ向かった。出がけにわざわざ香椎早希の部屋のドアを軽く叩く。

きっちりと仕立てのいい黒いスーツ。目の奥には疲れがまだ残っているのに、声色だけはいつもより幾分やわらかい。

「会社で会議がいくつかある。家のことは……悪いけど、君に任せたい。本家の年上連中が何か言ってきたら、直接俺に言ってくれればいい」

香椎早希はダイニングテーブルで牛乳を飲んでいた。朝の光が、陶器みたいに白い横顔を照らしている。

彼女は小さく頷く。

「分かった」

雲雀京介はその返事を聞いて、理由もなく胸の奥が落ち着いた。

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