第153章

黒いベントレーが雲雀家の旧邸へ滑り込み、背後で門がぎい、とゆっくり閉じた。

香椎早希は雲雀京介の腕からそっと手をほどき、先にドアを押して車を降りる。

顔に貼り付けていた上品な笑みは、外気に触れた瞬間ふっと消えた。残ったのは、薄い疲労だけ。指先でこめかみを軽く揉み、鈍い痛みを散らす。

京介も後ろから降りてくる。

ブリーフケースを握る指の関節が白く浮いていた。無言で玄関を抜け、リビングへ。

そして――。

ドン、とブリーフケースをローテーブルへ叩きつけた。

グラスががちゃん、と跳ねて鳴る。

早希は靴を脱ぐ手を止め、目だけを上げる。声は落ち着いていた。

「何をそんなに荒れてるの」

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