第157章

香椎早希の視線は、机の上のファイルに落ちた。指先で、こつ、こつと天板を叩く。だが手は伸ばさない。

「いいわ」

彼女は瞳を上げ、雲雀京介を見た。声は淡々としている。

「あなたを手伝ったのは、これが欲しかったからじゃない」

「分かってる」

雲雀京介の喉仏が、ごくりと上下した。瞳の奥の罪悪感が、さらに濃くなる。

「でも……これは、俺が渡すべきものだ。この間、家も会社も、君が支えてくれた。君がいなかったら、俺はとっくに潰れてた」

彼はファイルを、そっと前へ押し出す。声に、かすかな懇願が混じった。

「受け取ってくれ。じゃないと……俺の気が済まない」

香椎早希は数秒、黙った。言葉に押さ...

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