第158章

香椎早希の車が江形湾を出た直後、竹内結菜はテーブルの上の赤ワイングラスを、床へ叩きつけた。

ガシャン、と乾いた音。

ガラス片が散り、赤い液体が白い絨毯にじわりと滲んで、目に痛いほどの紅を広げていく。

「香椎早希……あのクズ!」

歯を食いしばり、爪を掌に深く食い込ませる。痛みで全身が小刻みに震えた。けれど、声は出さない。出せない。

さっきの香椎早希の目が、あまりにも怖かったからだ。

少しでも余計な真似をすれば、あの女は本当に、全部を雲雀京介にぶちまける。

竹内結菜は、そう確信していた。

――それでも、悔しい。

どうして自分が香椎早希に握られなきゃいけない?

どうして香椎早希...

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