第163章

香椎早希の足音が階段の踊り場に吸い込まれていく。雲雀京介は、まだリビングの入口に貼りついたまま動けなかった。

開け放たれた玄関から夜風が吹き込み、シャツの裾をばさばさと鳴らす。

拳を握りしめる。爪が掌に食い込み、じわりと血が滲んでも、痛みは感じなかった。

落ち着け。そう言い聞かせるほど、嫉妬と猜疑が心臓を齧っていく。

八神煉が香椎早希を見る目。取締役会での、あの妙な噛み合い方。喉に刺さった小骨みたいに、どうしても引っかかった。

もし本当に、あいつらが手を組んだら――自分の持ち札なんて、紙切れ同然だ。

目元の温和さがすっと剥がれ落ち、濃く沈んだ陰が残る。

京介は足早に追った。革靴...

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